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andnalayo

赤果寄思

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赤果寄思

「菜摘ちゃんだべ?あの木と同じく大きぐなったべなあ。感心、感心。」
今年のお正月、山形の祖父母の家の前で雪かきをしていたとき、見ず知らずのおばちゃまから声をかけられた。
天童市で専業農家を営む祖父母は、米、野菜、さくらんぼなどを栽培、収穫する。祖父は「趣味の農業」と言い太陽が照りつける暑い日も、雪の降りしきる寒い日も、毎日畑の様子を見に行っている。作物ひとつひとつが「めんこい」のだそうだ。
見ず知らずのおばちゃまはそんな祖父から私のことを聞かされ、私を知っていたので話しかけてくださったようだ。ちょうど雪かきで疲れていた私はおしゃべりを始めた。
「山形の特産品のさくらんぼを収穫するのは、それはそれは大変な作業の連続なんだ。皆であちらこちらの畑に出向いて収穫や梱包を手伝っているんだべ。私も菜摘ちゃんのじいちゃんの手伝いを毎年するんだ。その時じいちゃんは、『菜摘の木』だけは自分で収穫するんだよ。嬉しそうな顔をして…。この辺りで菜摘ちゃんは有名人なんだべ。」
初孫の私が誕生した16年前、実は祖父母はあまりの嬉しさからさくらんぼの苗木を植え、「菜摘の木」と命名していたのだった。その実は年々甘みが増しているという。
いつも寡黙な祖父が私を育てる様にさくらんぼの木を育て、大事に収穫してくれていた。
そしてその思いを近所の方々がそっと見守ってくださっていた。そのことに私は初めて、感動の意味を身をもって知った。その感動は何気ないおばちゃまとの 会話から生まれたものであって、又畑仕事を通じて助け助けられるというふれあいを大切にしているからこそ知り得たものであった。人とのふれあいは喜びであれ、悲しみであれ、心動かされるものである。
同時に自分の見えない所で、他人が感じていることを知ることができる。そうやって人の心は豊かにあたたかくなっていくのだと知った、寒い冬の日であった。
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